【後編】「モノづくりは世代を超えたコミュニケーションツールになる」沖縄芸大生インタビュー

こんにちは、ライターの水澤です。

12月10日から18 日まで開催された「こらくりアーツ展覧会 in 安座真」内の”こらくりアーツ・ワークショップ”では、総勢12名の学生たちが主体的に動いてきました。

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【前編】「沖縄に、子どもたちに記憶として残せられる文化を」沖縄芸大生インタビュー

http://korakuri.com/2017/01/17/【前編】「沖縄に、子どもたちに記憶として残せ/

【中編】「地域、人種を超えたものを創出することで、文化を守る」 沖縄芸大生インタビュー

http://korakuri.com/2017/01/17/【中編】「地域、人種を超えたものを創出するこ/

みなさん、すべての記事は見てくれましたか? 最後に、陶芸専攻と絵画専攻に通う学生にお話を伺いました。

モノづくりの“0から1”を楽しめる陶芸の世界

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デザイン工芸学科の工芸専攻陶芸コース、3年生の川那辺静さん(左)と同専攻の鈴木まことさん(右)

水澤:

沖縄にいると、「やちむん(焼物)」という独自の方言もあり、一度は陶芸を見聞きしたことがあると思います。お二人がそんな陶芸を志したきっかけから教えてください。

鈴木:

ハードルを上げますね。私は、子どもの頃から絵を描くことが大好きで、それはもう美術以外の選択肢がないほどでした(笑) その後、沖縄芸大に入ってみて、4つの工芸分野(染・織・漆・陶芸)を学んだときに、何もない状態から陶芸の工程、“焼”から日常品などを生みだせるところに魅力を感じました。

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川那辺:

私は、京都にある美術高校で絵画を勉強してきて、ふとしたときに友達から「今後、絵付けをやるものだと思っていた」と言われました。

水澤:

急な、友達からの助言でしたね。

川那辺:

「えっ、絵付け?」と聞き返すほどです。でも、立体を表現する絵付けもいいな、そう思って調べはじめたら沖縄の陶芸がありました。それから、どんどん心を惹かれたんです。

水澤:

陶芸を専攻してみて、自身に変化がありましたか。

鈴木:

たくましさ、でしょうか。講義で行う、釜を組み、焼きあげる技法は世界で通用しますから。だから、どこに行こうとも、自分の腕1本で道を切り開ける可能性がグーンと高まります。

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学内には釜があり、自分たちの陶芸をそのまま焼くこともできます

水澤:

自分で自分の道を切り開けるわけですね。

川那辺:

あと、学内には陶芸用の釜がいくつもあって、機械を使うもの、自分たちで温度を調節ができるものなど、さまざまです。そういった釜を使って、テストピースなどを作ることも可能です。

鈴木:

でも、私は昔ながらの釜タイプが好きなんです。機械ならオートメーションでスイッチを押せば簡単に仕上がりますが、釜の火加減を見ながら作る古いタイプの釜だと、モノづくりの0から1を味わうことができますから。

“土”のぬくもりが人と人の会話を生む

水澤:

今回のワークショップでは、「先人のように土器を焼こう!」というテーマで、沖縄の土を使った器づくりと野焼き。鈴木さんがおっしゃった陶芸の楽しさを味わえるものでしたね。

鈴木:

去年に引き続き、同じテーマでしたが……土器土をさわるのは2年ぶり。だから、自分たちが思った以上にかたちをまとめることができず、初心に戻ってきた気分でした。

川那辺:

でも、そんな土を使ってからこそ、一体感が生まれてました。例えば、子どもの一声にあわせて、シーサーや石敢當を一緒に作ったりするコミュニケーションが生まれたのは新鮮でした。

水澤:

子どもたちの反応はどうでしたか。

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鈴木:

はじめ、子どもたちが土をさわったとき、「気持ち悪い」と言っていて、すごく寂しい気持ちになりました。

水澤:

きもちわるい、ですか!?

鈴木:

私たち、泥遊びをしながら幼少期を過ごしてきた世代ですから、なおさらです。今の子は、土にふれる機会がそもそも減ってきていて。ただ、子どもたちは、慣れてきたら土にペタペタとさわるし、気持ちいいものだとわかってくれたと思います。

水澤:

結果として、相当の数が出来上がりましたね。

川那辺:

このテーブル1台分はできたかな。

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テーブルには大小さまざまな土器が並んでいました

鈴木:

親たちは土遊びしてきているからこそ、私たちのことを「先生」と慕ってくれて、照れくさいよね。

水澤:

別週に行われた野焼きはいかがでしたか。

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前日に雨が降ったりするような、不安定な環境ではじまった野焼き

鈴木:

ワークショップから1週後に野焼きを行ったので、当日にみなさんが来てくれるか心配で心配で……。でも、みなさんが来てくれたのはうれしかったです。

水澤:

野焼きが初体験のかたが多かったんじゃないですか。

川那辺:

子どもたちはとくにそうですね。

鈴木:

当日は、700度ぐらい温度があがっていましたし、風も強くて、参加者の安全配慮に気をつけましたね。みんなの代わりに、熱風で私の貴重なまつげが1ミリほど燃えましたけどね。

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当日は、風の流れによって火が左右に揺れていました

川那辺:

すごい、1ミリも笑

鈴木:

当日は12月なのに夏日のような暑さで、野焼きなのに軽装の子どもが多かった。服装に関するような連絡を徹底するなど、イベント運営で学ぶところが多くあり、次回に生かしたいですね。

切磋琢磨してきた仲間に自分の成長を見せたい

水澤:

原点回帰できたワークショップを通して、学内の目標に変化がありましたか。

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鈴木:

やっぱり、今後も陶芸をしたいなと思いました。変わらないです。あと今年は、個展を開きたいと思っているので、2月1日からはじまる「工芸専攻3年生展」の準備しながら、出展用として陶芸品を400個ほど制作しているところです

水澤:

お二人とも展示会に向けて大忙しなのですね。

川那辺:

もう、本番までドキドキ。ただ、今後はもっと技術を上げて、子どもにも陶芸を広めていけるようにしたい。展示会がその一歩になると思っています。

鈴木:

陶芸コースに入るまで、3年生はみんな一緒に学んできました。だから、それぞれの道に進んだ仲間に自分たちの作品を見てもらえるのは期待半分、不安半分です。

水澤:

ちなみに、鈴木さんはどんなものを出展されるのですか。

鈴木:

ただいま、南アメリカにあるペルー土器にハマっていまして、3年生展に間に合うように勉強中です。とくに、ネガティブ焼成という紀元前にアメリカ大陸で作られていた土器の手法なんですけど、そうした時代を横断するような手法を研究して、現代に落とし込むようなこともやっていきたいですね。

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ペルー土器の手間のかけ方など、魅力を教えてくれた鈴木さん

個の表現をリブランディングするとは?

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美術工芸学科の絵画専攻、大学院1年生の比嘉光里さん(左)

同専攻の金城桜さん(右)

水澤:

お二人とも沖縄出身ということで、どういうきっかけで沖縄芸大に入られたのですか。

比嘉:

私は、子どもときから絵が好きでして、中学校のときに先生から「首里に美術大学があるし、受けてみたら?」と教えていただきました。

水澤:

早い段階で進学を決められて、実際に入学したあとのギャップなどは生じませんでしたか。

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比嘉:

はじめは、ひたすら絵だけを描くものだと思っていました。でも、実際は講義として、映像制作をやったり、さまざまな版画にふれたり染物に行ったりと、自分の表現の幅を広げることにも力を注いでもらえたから、良い意味で裏切られた感覚がありました。

金城:

自分自身に変化を感じられますよね。

水澤:

金城さんはいかがですか。

金城:

受験生のときからここの先輩たちの作品をみてきて、強い憧れがありました。だから、開邦高校の美術コースに通ったときから、人一倍努力していましたね。いざここに入ると、意外に大人が多くて、27歳の同級生などさまざまな視点を知ることができて、視野が広がりました。

水澤:

思い出に残っている一コマはありますか。

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金城:

絵画専攻だといっても、油絵コースと日本画コースでは授業もバラバラです。でも、たまに共同授業するときに、1つの作品をディスカッションする機会がありまして、お互いにズバっ、ズバっといったりして、楽しかったです。

比嘉:

先生たちも、本質のことを伝えてくれるので、ときには悔しい気持ちになりますが、ハッとすることが多いですね。

はじめて同士だからともに成長できた

水澤:

今回のワークショップも、皆さんで話し合って決めたのですか。

比嘉:

はい。街中にランプを使って盛り上げる「安座真区に灯りをともそう!」は国頭村に事例がありまして、地元と観光客がコミュニケーションする場になっていると聞いていました。それを、安座真でも再現したい。だから、たとえ私たちがいなくとも継続して行えて、簡単に作れるものが良かったんです。

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簡易版のランプを作り、街中に火を灯していきました

金城:

ただ、火を使うと危険が出てくるから、参加者にはランプの火によって映しだされる絵を描いてもらいました。

水澤:

そのなかで、お二人はどのような準備をしましたか。

金城:

安座真の風景にふれてもらうために、見本紙として安座真の風景写真を撮影してきました。

比嘉:

私はワークショップにかかる経費といった書類を南城市の役員とやりとりしました。もちろん、先生たちの手助けをいただきながら、でもなかなか経験できないものでした。

水澤:

これからの将来に役立ちそうですね。ワークショップに来ていた子どもたちも楽しそうでしたね。

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比嘉:

当日は、2歳児とおばあさんが一緒に絵を描くような、世代問わずに参加してくれました。

金城:

はじめのコンセプトとして、こちらで用意した写真をなぞって描いてもらう予定でした。ただ、まだまだなぞることができない2、3歳児もいましたし、徐々に好きなものを描いてもらうようにシフトしたのが良かったところです。

水澤:

夕方からランプに火を点ける、点灯式もありましたよね。

比嘉:

点灯式のとき、準備してきた20個のランプに火をつけていくと、ぼわっと街に広がっていくさまが幻想的でした。あと、かわいいデザインにも心奪われましたね。

水澤:

南城市のゆるキャラ「なんじぃ」もいて、安座真らしさが詰まっていましたね。

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ランプの光に照らされたキャラクターやデザインは、大人たちの目からみても唸るものがありました

金城:

ただ当日は、12月でしたが暑くて陽が落ちるのが遅かったですし、ずっと待ってくれた子どもたちに申し訳ない気持ちでした。

比嘉:

私たちにとっても、野外のワークショップははじめてのこと。だから、予定通りに進まない、アクシデントも今後の学びにつながりました。

水澤:

地元のかたや学生も、はじめてのことを経験できる場になったわけですね。

まだ見ぬ世界に可能性を信じて

水澤:

お二人の卒業後の目標をお聞かせください。

金城:

私は、今後の行きかたを模索しているところです。理想や願望はあるものの、ベンチマークになるような人物がそばにいないので、まずは俯瞰して考えてみたいです。

水澤:

今後、制作はどうするのですか。

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金城:

制作は続けていきたいので、もっと身近な、自分らしさを感じられるものを作りたい。

比嘉:

私は、大学から外に出て揉まれてみたいと思いました。あまりにも、学内の設備が良いから、今後は限られたなかで何を生み出せるか鍛えてみたいです。

水澤:

お二人ともストイックな性格をお持ちなのですね。来年にワークショップを行う後輩に一言、どうぞ。

比嘉:

自分自身でやらないと何もわからないと思うので、まずはどんどん挑戦してほしい。

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水澤:

核心をついていますね。

今回、12名の学生にインタビューしてみて、沖縄の文化、そして自分たちの表現に真摯に向き合う姿に出会うことができました。展示会に並ぶ作品の裏では、絶え間ない努力と諦めない心がある。そんな、彼ら彼女らにまたお話を聞きに、会いたくなりますよね。

南城市と沖縄県立大学の学生たちの「コラボレーション・クリエイティブ」の先には次世代のコラクリを待っているのではないでしょうか。今後も、お見逃しなく、チェックしてみてくださいね。