【中編】「地域、人種を超えたものを創出することで、文化を守る」 沖縄芸大生インタビュー

こんにちは、ライターの水澤です。

これまでに私は、12月10日から18 日まで開催された「こらくりアーツ展覧会 in 安座真」内にありました、”こらくりアーツ・ワークショップ”を企画、運営をされてきた学生の姿を追ってきました。

 

「安座真の未来を灯し続けるアートを、一緒につくりたい」 こらくりアーツ・ワークショップに体験しました!

前回は、沖縄県立芸術大学で漆芸専攻、染専攻する学生に当日の様子をお聞きしました。

【前編】「沖縄に、子どもたちに記憶として残せられる文化を」沖縄芸大生インタビュー

今回も引き続き、沖縄芸大生インタビューの中編として、デザイン専攻と織専攻に通う学生のお話をお届けします。

自分の感性に真摯に向き合える

水澤:

近年、『デザイン』の意味が広義になっていると思います。ここ、沖縄芸術大学ではどのようなデザインを学んでいますか。

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工芸学部デザイン専修1年の朝日はるなさん(左)と同じく研究生の仲里佳奈子さん

朝日:

デザインだと、作品をきちんと説明できないといけませんよね。まず、情景基礎といって、彫刻やデッサンといった物を捉えることからはじめます。それから、私は映像やアニメーションを制作していて、最近だと視聴者参加型の映像、センサーを使って物を動かすようなアニメーションなどに挑戦しています。

仲里:

私も、研究生として自由にテーマを決めて、工房内にある機材を使って映像を作っています。

水澤:

研究生とは、どのように違いがあるのですか。

仲里:

研究生とは、テーマを決めてから半年または1年間、作品づくりに没頭できるんです。講義の単位は必要ない代わりに、修了制作を提出しないといけないですけどね。

水澤:

社会人のように、時間に制約がある人にはうれしいですね。これまでに映像制作したものを教えてください。

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朝日:

私たちは沖縄県内にとどまらず、県外・海外のコンテストにも出展しているんです。あまり知られていないですが……。

例えば、2016年に開催された「INTERNATIONAL STUDENTS CREATIVE AWARD(通称:ISCA)」では、映像作品『フリップの冒険』を出展したところ、佳作をいただきました。

https://www.youtube.com/watch?v=GhUADEIqkxc

水澤:

すごい!

朝日:

あと、上映作品を見てくださった人から、「海外のコンペに出してみないか」とお声かけいただくこともあります。

水澤:

これは、もっと多くの人に知ってほしいな。

仲里:

あと、映像内のセットから撮影まで、自分の思いどおりに制作できる環境があります。だから、時間を忘れるぐらい没頭してしまうこともしばしば。

朝日:

でも、1つの映像ができあがるまで、2ヶ月以上はかかりますから、良いものを作ろうと思えば思うほど苦しくなるし、妥協したくなるけど……、あとは自分との戦いですね。

水澤:

楽しさと苦しさを味わって、一流のアーティストになっていくわけか。

「安座真を誇れるシンボルを」街の願いを叶えたものとは?

水澤:

ワークショップでは、「大神官(うふじちゅう)をつくろう」というコンセプトで、紙芝居に挑戦したんですよね。

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大神宮(ウフジチュウ)とは、安座真区に伝わる120歳まで生きたと言われる大男のお話

朝日:

はい。大神官とは、安座真地区にある伝説の1つ。でも、イベントの打ち合わせのときに、「地元の人からはあまり認知されていない」とお聞きしまして、これを題材にしようと思いました。

仲里:

まずは、お話の内容を確認するために、区長さんや大神官を読み聞かせしている人に内容を。5回以上は聞いたよね。

朝日:

文献には記載があったものの、残念ながら現在は2、3行しか残っていませんでした。

水澤:

大神官にまつわる物語を1から作られた、と。当日は、方言を使いながら紙芝居をめくっていましたね。

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ワークショップに来た子ども一人ひとりに、紙芝居を使って、大神官のお話を伝えていました

仲里:

当時の方言だと、今とはニュアンスや意味合いも違ってくるので、日常的に使っている言葉に当てはめながら文章を決めました。安座真の区長さんにも「ここの方言は、表現は合っていますか?」と、内容の確認をお願いしました。

朝日:

あと、紙芝居向けの文章には、「または」「しかし」といった接続語は、基本的に使わないんです。代わりに、話し手が間をとったりするので、読み聞かせの人に話しやすいように文章の添削もお願いしました。

水澤:

紙芝居って奥深いですね。

仲里:

当日は、多くの子どもたちもいましたし、「親子で見ていても、最後まで飽きずに惹きつけられる物語とは何だろう」とずっと考えました。それは、映像制作といったことにも通じます。

水澤:

それほど、手が込んでいるなら、地元の人も喜ばれますよね。

朝日:

うれしいことに、紙芝居そのものは南城市に寄付することになりました。だから、現在から未来、ここに住む子どもにとって、紙芝居を通して自分たちの街を知るきっかけになってもらえたらと思います。

水澤:

「大神官(うふじちゅう)をつくろう」というタイトル通りに、安座真地区に物語が1つ、誕生させたわけですね。

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紙芝居でも取り上げた大神官のお墓

朝日:

しかも、大神官のお墓は南城市に実在しまして、ワークショップをきっかけに、お墓の前に看板をつけるといった整備がされました。だから、お墓の前を歩いた子どもたちも、ここにいた伝説の男をふと思い出してくれたと思います。

地域の教育につながる 「すべての人が楽しめるものを作りたい」

水澤:

お二人は、主に映像を学んでいますよね。今回の機会を通して、どのようなことが今後に活かせると思いますか。

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仲里:

題材は何しろ、見てくれる人にとって難しすぎないものを作ること。これは、紙芝居を通じて、再確認することができました。今後は、シンプルで簡単に、でも伝えることが多いものを制作したいです。

朝日:

確かに、それは強く感じました。「相手の心に届くには?」をすごく考えるきっかけになりました。

水澤:

相手に伝わるものができれば、日本中にアピールできますね。

朝日:

私の夢は、地域をも飛び越えられる、言語と人種をも取っ払うようなアニメを作りたいです。

水澤:

将来の目標とワークショップがリンクしたわけですね。

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朝日:

はい。そのためにも、まず寄贈する紙芝居をさらにいいものへと仕上げたいです。そして、旧暦4月18日に開かれる「うふじちゅう祭り」のときに、この紙芝居を読まれるような、伝統を生むようなお手伝いしたいです。

1本の糸から世界中に広がっていく織の魅力とは?

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工芸学部工芸専攻―織専攻の大学院1年、大城あすかさん(左)と同じく織専攻の3年生、森友里奈さん(右)

水澤:

私たちは、日常で当たり前のように服を着ていますが、それは“おりもの”が世界中に存在しているからだと思います。ここ沖縄芸大で、どのようなおりものを学んでいますか。

大城:

私は、沖縄に伝わる絣を研究していまします。昔からの伝統を守りつつ、新しいデザインに発展していくことをテーマですので。

森:

しかも、織は地域によって技法が全然違います。

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世界中にある織文化を見るために、旅行を計画することも

大城:

そうそう。特徴が違って、楽しいよね。

水澤:

お二人は、どんなきっかけで入学をしようと思ったんですか。

大城:

私は、もともと紅型が好きで、首里にある沖縄県立首里高等学校の染織デザイン科に入っていました。だから、「大学では、紅型を深めるために染専攻に入ろう」と考えていました。でも、大学の講義を通じて、布の魅力に気づいたんです。

水澤:

布の良さはどのようなものでしたか。

大城:

絣もそう、糸を1本ずつ重ねていくことでかたちができることです。たった1本の細い糸が少しずつ積み重なり、布になり、世界が広がっていく。そんな可能性を織に感じました。

森:

私も同じです。高校時代は、京都の美術高校で染めを中心に学んでいて、大学進学を考えたときに、紅型の鮮やかな色彩を見て、「地域によって、こんなにも色が異なるのか」と思い、沖縄芸大への進学を決めました。でも、織の講義を受けたとき、作業の緻密さ、糸を積み上げて積み上げて布になっていく過程を目の当たりにして感動したんです。

水澤:

布から糸と遡っていく、原点にこそ楽しみがあったわけですか

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数ミリ単位の糸が絡み合うと、もう大変です。解くために相当の時間がかかります

大城:

でも、糸から布になるまでには相当の労力と手間がかかります。

森:

友達と一緒に工房でやっていたはずが、気づいたら誰もいなくなることも。忍耐力と集中力は身につきます。

水澤:

織り手の努力があってこそ、身近なものが作られている。もっと、布製品を大切に使わないといけませんね。

「おりものリレー」でこどもの遊び心を育みたい

水澤:

お二人が織の魅力だと話す、糸からおりものをつくることが「おりものリレー」では実現しましたね。

大城:

はい。去年に引き続き、「おりものリレー」ができてよかったと思います。

水澤:

当日までの準備で苦労なさったことはありますか。

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大城

去年から、大学院生が主体になってワークショップを準備してきて、今年は私たちが担当するはずが……、同世代の院生がいなくて、たった一人で行ったんです。

森:

当日に、お手伝いしようと思ったら、ぜんぶ出来上がっていました。

水澤:

それは大変だ。今回のテーマも大城さんが決められましたか?

大城:

先生と相談しながら、テーマを決めました。以前に、南城市を知る機会をいただきまして、安座真には「ふくぎ木」と「あかぎ」が有名だとお聞きしました。あと去年は、海と山をイメージするカラーでおりものリレーをしたから、今年は赤と黄色を縦糸にしようと決めました。

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参加者が選んだ横糸を、織り機に通していきます

森:

もともと、縦糸に横糸を通すといった単純な作業でしたが、子どもに教えたらすぐに吸収してくれて。気づいたら自由に織り始めたので「子どもってすごいな」と思いました。

水澤:

そんな謙遜をしなくても。

大城:

すごい集中力でした。私たちの動作を1つ1つ、注目していたし。

森:

織ることにハマる子は、本当にハマってくれました。1人で10回以上、織ってくれた子もいるほどです。将来、織専攻にスカウトしたいぐらい笑

水澤:

子どもたちが喜びそうな、もこもこした糸もありましたよね。

大城:

子どもでも簡単にできるように、はじめは平織りという糸を入れてトントンするような、スタンダードな技法にしようと思いました。でも、綿がついたものやビーズが付いている糸を集めることができたので、遊びを加えようと思ったんです。

水澤:

遊びとは?

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親子でバトンタッチしながら、おりものを仕上げていく場面もありました

大城:

糸をヒョコッと出すようなものです。子どもたちには、ただ織るだけではなく、自分なりの遊び心を持ちながらやってほしい。講義で習った装飾織ならできるとパッと思い出しまして、やろうと決めました。

森:

子どもと一緒に、お母さんたちも「昔からやってみたかったの」と楽しんでくれました。

水澤:

大学での学びが現場に活きるのは大きいですね。

次世代に“おりもの文化”を伝えるために

水澤:

今回のワークショップで学んだことは、将来に役立つと思いますか。

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大城:

はい。今後の目標として、オリジナルの絣ブランドをつくりたいと思っています。だから、現在はユニバーサルデザイン(文化・言語・国籍の違い、老若男女といったに関わらずに、利用できるもの)といって、一人ひとりに合わせたデザインと着物の形を探しています。

今回の経験をふまえて、子どもや織を知らない人たちでも伝わる、わかりやすいものを作ろうと思いました。

水澤:

あと、装飾織という、武器を見つけたのは大きいですよね。

大城:

「装飾織も子どものつかみとしてはいいな」と織分野を教える真栄城興茂先生もおっしゃっていましたし、相手の遊び心をくすぐるような仕掛けを今後も考えたいです。

森:

私は、織をまず体験してもらうことが大事だと感じました。例えば、織といえば「鶴の恩返し」に出てくるような高価な着物というイメージが強いんです。さらに、手織りの着物だと何十万円もして……、私たちには手を出にくいものだと思われています。

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森:

だから、日常でも使える、コストを抑えた洋服やカバンなど、織を応用したものを取り扱うショップをオープンしたいんです。織をもっと身近なものに感じて欲しいので、今回のような機織り体験も良い手だと思いました。

水澤:

おりものと一緒に、体験をセットに売るわけですね。

森:

やっぱり、後継者がいないと廃れてしまう文化ですので、多くの人に知って欲しいし、もっと体験してもらいたいです。

今回、中編としまして、デザイン専攻と織専攻の学生にお話を聞きました。沖縄の文化を守ることは、地域や人種、性別・世代をとらわれずに、わかりやすく伝えていくことが大切だと感じました。シンプルに、かつ相手に伝わるものを、簡単に聞こえますが、今後はより一層重要になってくるでしょう。

後編では、陶芸専攻と絵画専攻の学生にお話を聞いてきましたので、最後までお楽しみください。